5 相続の承認、相続の放棄
(1) 相続の承認、相続の放棄とは
(イ)相続の効力との関係
相続の効力は相続の開始(被相続人の死亡)と同時に発生します。
相続人は相続の開始を知ると否とに関わらず、かつその意思を問うことなく、被相続人の権利義務を承継することになります。
しかし、相続財産には、不動産や預金などの積極財産だけでなく、借金のような債務もあります。債務が積極財産を上回る場合も考えられ、そのような場合に、相続人にすべてを承継させるのは酷な結果といえます。
また、たとえ積極財産の方が債務を上回るとしても、承継することを潔しとしない相続人もいる場合があります。
そのため、相続の承認や放棄の制度によって、相続人が相続の効果を受諾するか、拒否するかを選択する自由が認められています。
相続の承認には、全面的に被相続人の権利義務の承継を受諾する単純承認と、被相続人の債務は相続によって承継した積極財産を限度としてのみ負担し、相続人の固有財産をもって責任を負担しないという限定承認の二つがあります。
相続放棄とは、相続による権利義務の承継を一切拒否するものです。
相続人は相続の開始を知ると否とに関わらず、かつその意思を問うことなく、被相続人の権利義務を承継することになります。
しかし、相続財産には、不動産や預金などの積極財産だけでなく、借金のような債務もあります。債務が積極財産を上回る場合も考えられ、そのような場合に、相続人にすべてを承継させるのは酷な結果といえます。
また、たとえ積極財産の方が債務を上回るとしても、承継することを潔しとしない相続人もいる場合があります。
そのため、相続の承認や放棄の制度によって、相続人が相続の効果を受諾するか、拒否するかを選択する自由が認められています。
相続の承認には、全面的に被相続人の権利義務の承継を受諾する単純承認と、被相続人の債務は相続によって承継した積極財産を限度としてのみ負担し、相続人の固有財産をもって責任を負担しないという限定承認の二つがあります。
相続放棄とは、相続による権利義務の承継を一切拒否するものです。
(ロ)承認・放棄の熟慮期間
(a)熟慮期間
相続の承認・放棄は、原則として、相続人が相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければなりません。この期間を熟慮期間といいます。
熟慮期間が3か月とされる理由は、相続関係の早期安定と相続人の利益保護とのバランスに配慮したためです。相続人は、この熟慮期間内に相続財産の内容を調査して承認か放棄かの選択をすることになります。
熟慮期間の法的性質は、除斥期間と考えられていますので、3か月の期間の経過により、放棄や限定承認の選択権は失われ、単純承認したものとみなされます。
熟慮期間が3か月とされる理由は、相続関係の早期安定と相続人の利益保護とのバランスに配慮したためです。相続人は、この熟慮期間内に相続財産の内容を調査して承認か放棄かの選択をすることになります。
熟慮期間の法的性質は、除斥期間と考えられていますので、3か月の期間の経過により、放棄や限定承認の選択権は失われ、単純承認したものとみなされます。
(b)起算点
熟慮期間の起算点は、自己のために相続の開始があったことを知った時で、相続人ごとに各別に熟慮期間が進行します (最判昭51.7.1家月29巻2号91頁)。
相続人が未成年者等などの無能力者であるときは、熟慮期間は、その法定代理人が無能力者のために相続の開始があったことを知った時から起算されます。
自己のために相続の開始があったことを知った時とは、原則として各相続人が被相続人の死亡を知ったときです。
ただし、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じ、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続財産がないと信ずるについても相当な理由があると認められるときには、例外的に熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すると述べた判例があります (最判昭59.4.27家月36巻10号82頁)。
相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、熟慮期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算されます。後の相続人は前の相続人が有していた相続について承認か放棄かの選択権を承継しますが、その熟慮期間もそのまま承継するとしたならば、後の相続人に極めて短い時間しか残らなくなるとの不都合が生じるからです。
相続人が未成年者等などの無能力者であるときは、熟慮期間は、その法定代理人が無能力者のために相続の開始があったことを知った時から起算されます。
自己のために相続の開始があったことを知った時とは、原則として各相続人が被相続人の死亡を知ったときです。
ただし、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じ、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続財産がないと信ずるについても相当な理由があると認められるときには、例外的に熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すると述べた判例があります (最判昭59.4.27家月36巻10号82頁)。
相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、熟慮期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算されます。後の相続人は前の相続人が有していた相続について承認か放棄かの選択権を承継しますが、その熟慮期間もそのまま承継するとしたならば、後の相続人に極めて短い時間しか残らなくなるとの不都合が生じるからです。
(c)熟慮期間の伸長
熟慮期間は、家庭裁判所への申立てにより伸長することができます。
伸長の審判は、3か月の期間だけでは、相続の承認や放棄の判断をするための相続財産の調査ができない場合に下されます。
具体的には、相続財産の構成の複雑性、所在地、相続人の所在等の状況のみならず、積極・消極財産の存在、限定承認するについての相続人全員の協議期間及び財産目録の調製期間などの諸事情が考慮されることになります。
熟慮期間伸長の申立ては熟慮期間内にしなければならず、期間経過後の申立ては許されません。
伸長の審判は、3か月の期間だけでは、相続の承認や放棄の判断をするための相続財産の調査ができない場合に下されます。
具体的には、相続財産の構成の複雑性、所在地、相続人の所在等の状況のみならず、積極・消極財産の存在、限定承認するについての相続人全員の協議期間及び財産目録の調製期間などの諸事情が考慮されることになります。
熟慮期間伸長の申立ては熟慮期間内にしなければならず、期間経過後の申立ては許されません。
(ハ)承認・放棄の撤回・取消・無効
(a)承認・放棄の撤回の禁止
相続の承認及び放棄は、一度なされた以上熟慮期間中でも撤回することはできません。撤回ができるとなると法律関係を不安定にするからです。
(b)承認・放棄の取消
承認及び放棄がなされた後でも、一定の取消原因がある場合には、家庭裁判所への申立によりこれを取消すことができます。
取消しができる場合としては、未成年者が法定代理人の同意を得ずに行われた場合、詐欺又は強迫によりなされた場合、後見監督人がある場合に、後見人がその同意を得ないで被後見人を代理してした承認・放棄等があります。
取消しには、期間制限が設けられており、取消原因である情況がやんだ時(未成年者が成人した時、詐欺や強迫を受けた者については、詐欺や強迫がやんだ時) から6か月、または承認、放棄のときから10年以内に行うことが必要です。
取消しができる場合としては、未成年者が法定代理人の同意を得ずに行われた場合、詐欺又は強迫によりなされた場合、後見監督人がある場合に、後見人がその同意を得ないで被後見人を代理してした承認・放棄等があります。
取消しには、期間制限が設けられており、取消原因である情況がやんだ時(未成年者が成人した時、詐欺や強迫を受けた者については、詐欺や強迫がやんだ時) から6か月、または承認、放棄のときから10年以内に行うことが必要です。
(c)承認・放棄の無効
承認や放棄は法律行為であり、取消について民法総則の適用があることとの比較から、無効の主張も可能とされています。
無効原因としては、錯誤(最判昭40.5.27家月17巻751頁など)、心裡留保、通謀虚偽表示 (最判昭42.6.22、民集2巻6号1479頁) があります。
また、無断で署名押印をされた結果、相続人の真意に基づかないで相続放棄がなされた場合においても、無効とされています (浦和家審昭38.3.15家月15巻7号118頁)。
無効の主張を訴訟において行う場合、相続放棄の無効確認訴訟を行うことは許されておらず (最判昭30.9.30家月7巻11号52頁)、放棄の無効を前提とする権利義務の存否の確認を求めるものとされています。
無効原因としては、錯誤(最判昭40.5.27家月17巻751頁など)、心裡留保、通謀虚偽表示 (最判昭42.6.22、民集2巻6号1479頁) があります。
また、無断で署名押印をされた結果、相続人の真意に基づかないで相続放棄がなされた場合においても、無効とされています (浦和家審昭38.3.15家月15巻7号118頁)。
無効の主張を訴訟において行う場合、相続放棄の無効確認訴訟を行うことは許されておらず (最判昭30.9.30家月7巻11号52頁)、放棄の無効を前提とする権利義務の存否の確認を求めるものとされています。